2013年10月2日水曜日

★★2013年11月2日(土)より関西3館同時公開決定!★★


関西のみなさまお待たせしました!
いよいよ『蒼白者A Pale Woman』が、
撮影舞台でもある関西に凱旋を果たします。
11月2日(土)より

大阪、第七藝術劇場
京都、京都みなみ会館
神戸、元町映画館

にて一週間限定上映!さらには『蒼白者』と同じく、キム・コッビ主演の
『クソすばらしいこの世界』( http://kusosuba.com/ )も同期間3館にて上映されます。
続けて鑑賞される方には「キム・コッビ割」もあり。
どうぞご期待下さい☆

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◇第七藝術劇場

11月2日(土)~11月8日(金)20:40

<料金>
前売り1,400円
当日一般1,800円 専門・大学生1,500円 シニア1,000円
※初日2日は常本琢招監督、宮田亜紀さんによる舞台挨拶あり。

〒532-0024 大阪府大阪市淀川区十三本町1−7−27
http://www.nanagei.com/index.html


◇京都みなみ会館

11月2日(土)~11月8日(金)18:45

<料金>
前売り1,400円
当日一般1,800円 専門・大学生1,500円 シニア1,000円
※11月3日は常本琢招監督、宮田亜紀さんによる舞台挨拶あり。

〒601-8438 京都市南区西九条東比永城町79
http://kyoto-minamikaikan.jp/


◇元町映画館

11/2(土)〜11/8(金) 18:00

<料金>
料金:一般1700円/学生・シニア1000円/神戸映画サークル会員1200円
※初日2日は常本琢招監督、宮田亜紀さんによる舞台挨拶あり。

650-0022 神戸市中央区元町通り4丁目1-12
http://www.motoei.com/index.html

★3館共通キム・コッビ割当日2プロ3,000円★
同館による『クソすばらしいこの世界』との連続鑑賞で適用となります。

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2013年7月9日火曜日

『蒼白者 A Pale Woman』仙台公開に寄せて(常本琢招)




東京に続いて、『蒼白者 A Pale Woman』は8月10日土曜日から仙台市の桜井薬局セントラルホールで公開される。
これは僕にとって、待望の、待ちに待った、渇望していた上映になるのだけれど、その理由はセントラルホールの中心人物・小野寺勉氏との出会いがあった30年前にさかのぼる。

当時大学生だった僕は仙台の映画の情報誌「き~の」(現在休刊)のスタッフとなって、そこで、同じスタッフでありセントラルホールに勤務している小野寺氏と知り合ったのだった。
東映映画に入れあげている小野寺氏からは加藤泰や鈴木則文の素晴らしさを教えられ、当時作った8ミリ映画『にっぽにーず・がーる』の1シーンをセントラルホールで撮らせてもらったりもした。
その後僕が監督を志し上京した際には「常本くんが映画を作ったら、ウチでかけるから」と言っていただき、その言葉が僕の大切な支えとなっていたのだった。
恩ばっかりだ。

そのあと僕には映画の企画がいくつも生まれては消え、一方で仙台もシネコンの台頭により街中のミニシアターにはつらい風が吹いてきたようで、セントラルホールも何度か大変な局面があったと聞いた。
仙台に足を運ぶたび「早く映画作ってもらわないと、ウチもいつまであるかわからないよ」と冗談交じりにいわれ、そのたびに焦る気持ちはあったのだが、こればかりは焦ってもどうしようもなかった。

そしてようやく、30年ぶりにその機会がめぐってきました。初日前日・9日金曜には、僕の過去作も上映してもらえる予定です。
お近くの方は、是非お越しください。

東京上映は笑顔で迎えた僕ですが、仙台上映の初日は、泣き顔で迎えると思います。
常本琢招

2013年6月25日火曜日

★★いよいよ最終週!『蒼白者A Pale Woman』追加イベント決定★★

いよいよ6/28(金)までと一週間をきった『蒼白者A Pale Woman』の
最終追加イベントが決定!!!

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『蒼白者A Pale Woman』トークショー ※敬称略

6月26日(水)上映後
 【<蒼白×暗闇>ナイト~TVディレクターが監督するとき】
 登壇者: 戸田幸宏さん(『暗闇から手をのばせ』監督)、常本琢招監督

同じユーロスペースでこの3月上映、大好評を博した「暗闇から手をのばせ」じつは「監督がTVディレクター」という共通点が!そこで今回は戸田さんをお呼びし、TVディレクターが監督をすることについてこだわりや苦労話を語り合う…お見逃しなく!

6月27日(木)上映後
 【常本監督の全てを知る男・井川耕一郎が『蒼白者 A Pale Woman』を語る!】
Vシネマ時代、常本琢招監督と数多くのコンビを組んだ脚本家の井川耕一郎氏が常本監督の新作を、監督を知り尽くした男ならではの独自の視点で語ります。
NEW!常本監督の盟友・大工原正樹監督も緊急参戦!ピンク時代からの同期が加わりトークはよりディープになる可能性あり!

登壇者:井川耕一郎(脚本家・映画監督)、大工原正樹(映画監督)、常本琢招監督

6月28日(金)上映後
 【蒼白者打ち上げ! 常本琢招監督レア短編『アナボウ』1日のみの特別上映】

「蒼白者 A Pale Woman」が誕生するもととなった常本監督『アナボウ』を特別上映。キム・コッビも絶賛!?東京ではめったに上映の機会がないケッサク短編が、ついにその全貌を明らかに!!

『アナボウ』(20分)
監督・製作:常本琢招 原作・脚本:香川まさひと 音楽:村山竜二 
撮影・佐野真規 照明・玉川直人 録音・黒須健 整音・光地拓郎 助監督・地良田浩之
制作・名倉愛 アナボウ部ポスター制作・新谷尚之 「ダイクマ」CM編集・大畑創
出演:吉谷彩子 池永亜美 金井隆 美和 中原翔子

アナボウ・・・それは、前代未聞のスポーツ。内容は・・・
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2013年6月23日日曜日

この映画は低予算で大きな枠組み、フレームの話をやろうとしている~6/18高橋洋さんトーク

6月18日(火)<高橋洋×常本琢招 映画演出を語る>

左より常本琢招監督、高橋洋さん


この日は、脚本家・映画監督の高橋洋さんがトークに登壇。ごく初期から常本監督の演出の腕を高く評価されている高橋さんに、常本演出、さらに『蒼白者A Pale Woman』について伺いました。
高橋:今日は常本演出を語るということで、家にあったオリジナルビデオ『健康師ダン』(1997)を見たんですけど、やはり非常に良くてですね、これが常本さんの強さだと思ったのは、主演の京本政樹の助手の女の子が京本を好きで好きで仕方がないんだけど、京本は気づいてない。
女の子は京本と握手したくてしたくてたまらなくて(京本と握手すると秘孔を突かれて得も言われぬ快楽を感じる設定)、それであるシーンで、京本と握手するチャンスが来るんだけど、京本から差し出された手を今まさに握ろうとすると横にいた(友達役の)安岡力也が不意に女の子の手を握って非常に悔しがるという・・・
常本:ベタベタなシーンですが。
高橋:でもあれ、感動するんですよね。人間の心の動きが伝わってくるんで。そういうドラマって、ふつうみんなタカチとしては撮れるんですけど、ああいうふうに、エモーション、心の動きが伝わるように撮れるのは難しくて、それがチキンとできていると、常本さんの映画を見ていていつも思うわけです。
で、そういう物凄い武器を持ってる常本さんが、キム・コッビ演じる、尋常な人間のテンションではないところで生きてる人物を描く…これは、演出のアプローチが相当大変なことになるぞ、っていうね。言葉の壁もあるし。そこをどうトライしたんだろうっていうのが、演出的には気になったんですけど。
常本:今まで日本の俳優さんと組んできたうえで、僕はどんな作品でもリハーサルをクランクイン前にやってきて、そこで役になじんでもらうということをやってきたんですが、実は今回もコッビさんと忍成さんに1日だけリハーサルをやってもらったんですね。
いつもはそこで役者さんにエンジン全開にしてもらって現場に突入、という感じなんですが、今回、キム・コッビの場合はリハーサルでは気持ちを十全に入れて演じる、という感じではありませんでした。「俺の今までのやり方は通用しないんだなあ」と思いましたが、その代わり、コッビさんはお酒を飲みながらなどで、とにかく、僕やキャストの皆さんと「語り合う」ことを望まれました。コッビさん自身「韓国では1か月くらい撮影前に準備期間を持つけれど、今回はそれがないので」と言ってましたが、リハより、スタッフ・キャストとコミュニケーションをとることで役の感情をつかんでいったのが印象的でした。
僕との間で言うと、「微笑み」がコッビさん演じる役のポイントだったので、なぜ微笑むのか、どのシーンでどの程度の微笑みなのか、に関しては細かく詰めていきました。
いざ本番になると、僕のつたない指示を十全に理解して、指示以上に僕がやってほしいことを表現してくださったので、素直にすごいな、と思いました。
そして、この映画の映像設計について高橋さんは・・・
高橋:この映画を最初見たとき、キム・コッビが何しに日本に来たのかが、いまひとつわからなかったんですが、2回見て、「お母さんと決着を付けに来たんだな」と明確にわかりました。
そうすると、韓国のシーンの後、日本に舞台が移って中川安奈さんが水族館のシーンで青白い光の中を受けて死人のように立っているのは非常に重要なことなんだなって思いました。
韓国で死をも決意したキムコッビがいて、うけとめるのはあの青い顔をした中川安奈なんですよね。そして後半の水族館のシーンでキム・コッビが残酷な決断をするシーンでも、そのあと倉庫で安奈さんの長男を渡辺護さんふんする会長に譲りわたすシーンでも、同じように青白い光が当たっていて、同じ血が(青白い?)流れてる二人の女の戦いであるっていう風に映像設計がされているんだなあと思いました。
それから、回想で、揺らめいているような光がいつもあたり続けているんですが、あれがすごく効果的でいいんですよね。コッビが最後死ぬところで白い光が当たるんですが、あそこにも揺らめく光があってほしかったな、と思ったくらい(笑)
そして、高橋さんは『蒼白者A Pale Woman』が意外な映画に似ていると言い出しました。
高橋:この映画を見て思い出したのは、『日本の黒幕<フィクサー>』、かつて大島渚が撮ろうとして頓挫したことだけが語られてる映画ですが、いま観るとすごく変、っていう。当時のロッキード事件の児玉誉士夫がモデルといわれていて、右翼の巣窟である屋敷の中がついに出てくる、というのが見せ所だったんですけど、この映画も食肉産業のドンの屋敷が出てきて、そこには男くさい奴等がいて、「この家から出て行けない」人の話でもあるという。その捕らえ方が、蒼白者って、すごく近い。
常本:『日本の黒幕<フィクサー>』は封切り時に観て以来、見返していないのでなんともいえないのですが・・・その屋敷の中で、その男くさい男たちが、何かというと一緒に飯を食って重要な話をする・・・という記憶は薄ぼんやりあってですね、影響されたわけではないんですが、『蒼白者 A Pale Woman』も中川安奈さんの作った食事を食べながら重要な話をする、というシーンが繰り返し出てくるので、そこは似てるなあと思います。
千浦僚さんからはルイス・マイルストンの『呪いの血』にストーリーがそっくりといわれて、そういえば確かに小さいころ愛し合った二人が、片方が親族を殺したことで引き裂かれ、何年か経って再び再開したときに悲劇が始まる・・・といった枠組みがそっくりで、驚きました。
そして最後に。
高橋:この映画は低予算で大きな枠組み、フレームの話をやろうとしている。そこから考えると、今後映画を作る人たちは、企画と予算とお話作りと演出、全部ひっくるめて考えて、それがあるバランスに達したときに“はじめて”商品たりうるという、恐ろしい時代になったなあと・・・
さまざまな角度から『蒼白者 A Pale Woman』に迫ってくれた高橋さん。
ありがとうございました!

2013年6月19日水曜日

★★『蒼白者A Pale Woman』トークショー★★

6月8日(土)より『蒼白者A Pale Woman』がユーロスペースにていよいよ公開!
上映期間中の豪華トークショーを発表いたします!

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『蒼白者A Pale Woman』トークショー ※敬称略

6月8日(土)上映前
 【初日舞台挨拶】
 登壇者:
 忍成修吾(シュウ役)、木村啓介(シゲアキ役)、宮田亜紀(アサミ役)、常本琢招監督

6月9日(日)上映後
 【ハイパー女優ナイト!~常本映画を彩る女優たち】
常本作品には欠かせない、映画を彩る女優たちが今宵一同に会する夢のようなトークショー!常本映画の魅力を女優たち本人らが迫ります。あるいは常本監督の欠席裁判となるかも…?
 登壇者:
 久遠さやか 「蜘蛛の国の女王」より
 佐倉萌  「新任女医 淫らな診察室」より
 中原翔子 「アナボウ」より
 西山朱子 「蜘蛛の国の女王」より
 ほたる 「黒い下着の女教師」「投稿写真白書」より
 宮田亜紀 「蒼白者 A Pale Woman」より

6月13日(木)上映後
 【ツネちゃんが会いたい~vol.1】
常本監督がピンクデビュー以来、一貫して応援し続けて頂いている福間健二さんをゲストにお呼びします。福間さんは詩人、映画評論家でもありますが、近年では『わたしたちの夏』、『あるいは佐々木ユキ』など精力的に映画も監督されています。
 登壇者:福間健二(詩人/映画監督)、常本琢招監督

6月15日(土)上映後
 【ツネちゃんが会いたい~vol.2】
常本監督ピンク映画デビュー作『制服本番 おしえて!』(1990)で主題歌「みなしごキッチン」の作詞をした稲川方人さん。23年後の『蒼白者 A Pale Woman』をどう見るか?
登壇者:稲川方人(詩人、編集者、批評家)、常本琢招監督

6月16日(日)上映後
 【28年目の師弟対談】
 常本監督が映画業界に入り助監督として師事した廣木隆一監督と、それをよく知る
 塩田時敏さんを迎えてのトークショー。
 28年目にしてようやく一般劇場デビューを果たす弟子との再会の一夜。
 登壇者:廣木隆一(映画監督)、塩田時敏(映画評論家/「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」ディレクター)、常本琢招監督

6月18日(火)上映後
 【高橋洋×常本琢招 映画演出を語る】
常本琢招の演出家としての手腕を高く評価してきた『旧支配者のキャロル』も
記憶に新しい高橋洋が『蒼白者 A Pale Woman』を通して映画演出とは何かを改めて語り合う!
登壇者:高橋洋(映画監督、脚本家)、常本琢招監督

NEW!6月21日(金)上映後
【フライデー<ツネカシ>ナイト!】
『蒼白者A Pale Woman』を熱烈に支持して止まない映画監督の樫原辰郎さんが緊急トークに参戦決定!樫原さんと常本監督はピンク映画、Vシネなどでキャリアを積み重ねてきた戦友でもあります。ジャンル映画の衰退期を共にくぐり抜けた、映画に憑かれた男二人の生きざまが垣間見える一夜になる予感・・・ご期待下さい!
登壇者:樫原辰郎(映画監督・脚本家)、常本琢招監督

6月22日(土)上映後
 【女優・中川安奈を語る】
中川安奈ファンを公言する五所純子さんを招いてのトークショー。
「蒼白者」の裏の主役である中川さんの魅力に迫ります。
登壇者:五所純子(文筆家)、常本琢招監督
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人を愛するのも才能がいるのだ~6/15稲川方人さんとのトーク

6月15日(土) 上映後 トーク<ツネちゃんが会いたい~vol.2>

左より常本琢招監督、稲川方人さん(詩人、編集者、批評家)


この日のゲストは、福間健二さんに引き続き常本監督が是非ともお呼びしたいゲストシリーズ第2弾、稲川方人さんです。稲川さんは、常本監督のピンク映画デビュー作の主題歌の歌詞をつけて下さった方。
日ごろからお付き合いがある訳ではないとのことですが、デビューした当初から常に意識してくださったという稲川さんに『蒼白者A Pale Woman』の感想をお聞きしました。
その一部を採録いたしましたのでご紹介いたします。

稲川:常本さんの作品は、昔観たことのある8ミリの傑作長編が非常に強く印象に残っていて、ずっと注目をしていました。
常本:ありがとうございます。それが80年代終わりで、その後にピンク映画デビューしたのですが、映画だから主題歌がなきゃと、何故かそのとき思ってその作詞を稲川さんにお願いしたらなんと受けてくださったという。
稲川:「みなしごキッチン」というタイトルでした。「みなしご」というのは、その頃、私が抱えてきたとても重要なテーマだったことを覚えています。
その後、密な付き合いを常本さんとしている訳ではありませんでしたが「常本琢招」という名前は、常にある種の注意ははらっていました。
ただ80年後期から90年に入って、2000年代と映画自体の変容期に、常本さんを含めてその頃の作家たちはどうしているのだろうと思っていたもところもあり、今回の一般劇場デビュー作のお知らせは私にはとっては唐突ではありましたが、非常に嬉しいものがありました。
常本:映画の印象は如何でしたでしょうか?
稲川:本日観たのは二度目だったのですが、今日においてジャンル映画の形式や話法を背負いながらノワールな犯罪映画を撮ることの意味を考えました。
話法や語り口に破綻がない。「破綻がない」という評価はネガティブに聞こえるが、そうではなく、ジャンル映画に対する常本さんの意識、認識が十全に発揮されているという意味です。「ジャンル映画」をどういう風に語れば、最も現在の映画の意識に一致するのか、常本琢招という作家の現在性と話法にずれがない、ということが印象的でした。
映画全般の意識が、ジャンル映画を消滅させようとしてきた20年だったと思います。
映画が別のものに肥大した20年だった。その中で常本監督に限らず、映画が歴史的に培っていた話法を模索している人は少数いますが、全般的にはジャンル映画が衰退していく過程だったと思います。
『蒼白者』はノワールな犯罪映画を、作家の同一性を崩さずに、映画的なものの記憶を引き出してくれているなという感じがして、観ていて私の映画的体験に豊かな光を与えてくれたと思いました。
常本:今回はCO2という企画内で撮ったのですが、CO2で今まで撮られてきた作品は、自分の身の回りのことが主題であったり、自分たちの抱えている問題を扱うような映画が多い印象があって、こういうタイプの映画はあまりないかなと思っていたことが一つ、併せて今まで自分の観てきた娯楽映画を、まずは踏襲しないと先に進めないと思っていたところはあります。
ただ、いわゆる若い観客層と自分の意識がずれたまま出来上がるのかという不安は感じてはいましたが、強引にやりたいことをやってしまいました。
稲川:ジャンル映画が映画史120年の過程で形成され、そしていまそれが衰退する時期にこれを出すというのは、反時代的な行為なわけです。今日の時代的感性へのアンチテーゼとも言えます。もっと言えば攻撃的ともいっていい。もちろん現在の感性がこの映画をどう見るのか、どうずれるのかということはあります。しかしそもそもが反時代的な映画なのだから、それは無用な危惧だと思います。
またその反時代的な行為と攻撃性は、常本監督の作家としての同一性のみならず、映画にとってよいことだと思うのです。映画自身が作ってきた長い時間に対する「まなざし」はいつでも注がれなければならない、それはとても重要なことです。そしてその視線を獲得するのは才能のいることです。
常本:過分なお言葉ありがとうございます。私としては、ジャンル映画の一番最後の方に、こんな犯罪映画をこっそりおきたいなと思っていたので自分にとっては満足しかないというのが本当のところです。
そのあと、話は具体的に映画本編の話に。

稲川:大阪の町と光が非常に印象的な映画でした。
常本:TVディレクターとして、よく大阪に行く機会が多いのですが、大阪には西日の強いイメージがありました。その光の中でそこに蠢いている人たちの姿を妄想してストーリーを組み立てたのを覚えています。
稲川:光と言えば、キム・コッビが、最初に教会で倒れるシーンや、重要なことをしゃべっているときに常に白い光が当たっているのも印象的でした。
常本:蒼白者というと蒼(青)なんですが、顔面蒼白という時は白なわけで、映画自体のキーカラーは白かなとイメージをもっていたので、コッビさんにあたる光はそれに統一してやってもらいました。
稲川:コッビさんに当たる光はむしろ垂直的ですよね。神学的な光なわけです。それが縦の光だとすると、町を照らすその西からの光、そちらは横軸の光と言っていいかもしれませんが、それが大阪の町の雰囲気を作っているなと思いました。「才能」という言葉を使ったのでさらに言いますと、人を愛するのも才能がいるのだということをキム・コッビは体現しています。私も例外ではありませんが、いまこの国は、人を愛する才能を奪われてしまった人々でごったがえしています。そこに彼女は降誕したのだと思います。
丁寧に言葉を紡いで、この映画への想いを静かに語って下さる姿が印象的でした。
終電ぎりぎりまで残って下さり本当に有難うございました。

2013年6月2日日曜日

【メディア情報】キム・コッビさん単独インタビュー掲載!

映画サイト「LOAD SHOW」にてキム・コッビさんの単独インタビュー掲載!
来日時に撮影された神楽坂でのオフショットも必見です。